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骨粗鬆症と歯科治療について

患者さんからよく聞かれる質問に次のようなものがあります。

「歯医者さんに『骨粗鬆症薬が悪影響を及ぼすことがあります。内服を中止できるか、整形外科の先生に聞いてきてください』と言われました。」

私は「中止する必要はありません。」といつも答えています。この件についてよく聞かれるので、コラムに書いておきます。

骨粗鬆症の治療薬の中で、ビスホスホネート(破骨細胞を減らす。週1回起床後内服)には、顎骨壊死という歯科医師泣かせの副作用があるとずっと言われてきました。この病気は顎骨の一部が死んでしまうもので、非常に治りにくいのです。抜歯などの外科的処置や細菌感染でさらに発生しやすくなります。歯科医師にとっては絶対に遭遇したくない病気であることは十分理解できます。

しかし、整形外科医にとって、ビスホスホネートは「コストパフォーマンスが良く、実績十分な骨粗鬆症薬」です。内服を中止させたい歯科医師と、中止させたくない整形外科医の間でこの問題はずっと続いてきました。私が研修医だった2000年代には、3ヶ月休薬していたと記憶しています。

研究が進んできた2010年頃から、反対意見が広まってきました。

理由は以下の4点です。

  1. 休薬後も薬効がかなり長期間続くため、休薬の意味がない。
  2. 休薬すると骨密度が低下し、骨折が増加する。
  3. 顎骨壊死は非常に珍しい。骨折のリスクの方がはるかに高い。
  4. 「口の中の衛生状態の悪さ」が顎骨壊死のもっと大きな要因である。

現在ではさらに研究が進み、日本口腔外科学会のポジションペーパー2023(歯科医師学会公式声明)では、「原則として抜歯時にビスホスホネートを休薬しないことを提案する」とされています。当院では、「骨粗鬆症薬の休薬は必要ありません」「歯周病などで口の中が汚れていると顎骨壊死が起こりやすいので、内服開始前には歯医者さんに一度見てもらいましょう」と患者さんや歯科医師の先生方にお伝えしています。