骨折とは
骨折は、外部からの力によって骨の連続性が失われた状態を指し、その種類には転位骨折(骨が曲がり、ねじれ、つぶれる)と、転位を伴わない不全骨折(亀裂など)があります。原因によって外傷性骨折、病的骨折、疲労骨折に区分され、折れ方の形態に応じて横骨折、斜骨折、らせん骨折、粉砕骨折などに区分されます。
粉砕骨折は骨片が3つ以上ある場合を指し、俗称として複雑骨折という用語が使われます。骨折部が露出している場合は開放骨折と呼ばれ、皮膚の下で起こっている場合は閉鎖骨折とされます。開放骨折は感染症や皮膚壊死などの合併症のリスクが高まります。各骨折は異なる特徴を持ち、部位や患者様の年齢、体質によって治療法が異なります。そのため、最適な治療を行うには、骨折の状態を正確に把握することが極めて重要です。
骨折の症状
最も一般的な症状は痛みで、安静にしているときはそれほど感じませんが、力がかかったり、動いたり、触れたりすると痛みが現れます。また、皮下出血による出血やあざ、皮膚の変色が見られることがあります。骨折後数時間以内には、周囲の軟部組織が腫れてきて可動域が制限され、時には異常な方向へ曲がってしまうこともあります。ほとんどの場合、動かすと痛みが増しますが、動かせるからといって骨折が残っていないわけではないため、自己判断は避けてください。特に、言葉で症状を伝えにくい小児や認知症のある高齢者などには十分な注意が必要です。
骨折に対する応急処置
- ケガした場所を確認します。
- 痛みの発生箇所を確認し、出血の有無を確認します。
まず強い痛み、腫れ、変形、動かせるかどうかなどを確認します。次に、ケガをした部位を確認し、骨が飛び出していないかを確認します。一つでも該当する場合は骨折が疑われます。
出血している場合は、まず止血します。手足の骨折の場合は、応急処置として骨折部位を固定します。板状のものを人工副木として置き、布で縛って痛みのない位置を保ち、動かすことによる悪化を防ぎます。人工副木は骨折部の上下の関節よりも長くすることが重要です。例えば、すねを骨折した場合、人工副木は膝の上からかかとの下までの長さのものを当てます。応急処置は、患者様の痛みやその他の症状を最小限に抑え、医師の診察・治療を受けるまで症状の悪化を防ぐ効果があります。
骨折の治癒過程
骨折の治癒過程は、炎症期、修復期、リモデリング期に分かれて段階的に進行し、これらの段階が重なり合いながら進んでいきます。骨は本質的に、強度を維持するために絶えず破壊と再生を繰り返している組織です。他の組織が損傷すると通常、瘢痕組織が形成されますが、骨の場合は新しい骨組織が形成され、欠損が修復され、正常な機能が回復します。この新しい骨組織は「仮骨」と呼ばれ、その形成と成長は超音波検査やレントゲン検査で確認することが可能です。
炎症期
骨折直後から、損傷した組織や内出血を除去する免疫細胞による治癒過程が始まり、骨折後数日でピークに達し、数週間続きます。この間、修復のための血流増加や免疫細胞の活動により、患部の腫れや圧痛が生じます。
修復期
修復期は骨折の数日後から始まります。期間は数週間から数ヶ月で、その間に仮骨が形成されます。仮骨はカルシウムを含まない柔らかい弾力性のある組織で、レントゲン写真には写りません。この期間は変形やズレが生じやすいので注意が必要です。数週間かけて仮骨は徐々に石灰化し、レントゲン写真に写るほど硬く丈夫になります。
リモデリング期
骨が元の状態に戻り、仮骨が徐々に再吸収されて強い骨に置き換わる期間です。この期間に骨の正常な形と構造が取り戻されます。圧力をかけると痛みを感じることがありますが、再骨折のリスクは低いです。
どの段階まで進行しているかを正確に把握することで、固定を減らして適切なリハビリが可能になり、早期治癒に導くことができます。早期にリハビリを行うことで、関節が硬くなったり可動域が狭くなったりすることなく治癒する可能性が高まります。骨は破壊と再生を繰り返し、強度を維持し、負荷がかかると強くなる性質があります。長期間の固定は治癒を遅らせ、周囲の関節の拘縮を引き起こし、関節を滑らかに動かすことができなくなってしまいます。特に手指は日常生活で繊細な作業が多く、拘縮は日常生活に大きな支障をきたします。したがって、固定解除やリハビリ開始のタイミングを適切に見極めることが非常に重要です。
骨折の治療
骨には生きた細胞があり、骨折しても自然に修復する能力が備わっています。特に、骨折箇所が適切な位置にあり、健康な細胞が存在する場合、骨は効果的に治癒するとされています。骨折の治療法や必要な期間は、具体的な骨折の形態によって異なります。手術治療が必要であるか、あるいはギプスなどの装具を使用する場合でも、骨折部に存在する生きた細胞があれば回復も早いため、この細胞を考慮した治療を行います。